第4回音楽講義のお礼と学び

先週木曜日は、第4回目のオンライン音楽講義でした。ご参加くださった皆様、今回もありがとうございました。

慌ただしく過ぎてゆく毎日の中で、私にとって音楽を聴いたり、本を読んだり出来る時間はとても想像的で贅沢な時間です。
最近では、月に1.2回開催されているこのオンライン音楽講義もまた、私の贅沢タイムの1つとなり、少し日常を離れて旅に出ているような気持ちになっています。
コロナ禍で様々な場所に出向いてゆくことが容易に叶わなくなり、しかしその中でも、音楽を通じて広い世界につながってゆける可能性がたくさんあることに、大きな期待を感じています。
第3回目の講義の、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』の絵画説明で、「この作品は、それまでの描き方と異なり、絵を観ている人に、視覚的にその場に参加しているような印象を与えるものであった」という内容のお話がありましたが、優れた芸術作品というのは、やはり時代を超えてもなお、観ている人、聴いている人々の心に強く訴えかけてくるような、考えを促してくれるような、強いメッセージを持っているのですね。

さて、今回の講義で私の心に一番響いたものは、やはり講義のタイトルにも入っていた「モーツァルトに起きた作曲の危機」の部分でしたが、印象的だったのは、カトリックの環境の中で育ったモーツァルトが、プロテスタントであったバッハの音楽に出会った後、どのようにしてそのショックを乗り越えていったのか、といったところのお話でした。

モーツァルトのような大天才作曲家が一体どのようなことを考えながら約250年前のヨーロッパで生きていたのか想像も出来ませんが、それでもやはりその時代、その国に生まれたことによる束縛や不自由さはきっとたくさんあったに違いありません。そして、それまで慣れ親しんでいたもの、馴染みのあったもの、信じていたものとはまた違う種類の価値観が自分の中に入ってくる時、人は多かれ少なかれショックを感じます。モーツァルトにとってそれは、バッハの音楽に出会ったことでした。それらの苦痛から逃れるために見てみぬふりをするか、落ち込んだり投げやりになるか、そうではなく、よりよいものとして自分の中に受け入れ、織り交ぜて新たな世界観を作り上げていくかで人生も歴史も変わってきますね、、、。
天才モーツァルトはその危機を見事に乗り越え、美しく崇高な音楽作品を私たちに遺してくれたのです。

次回講義までしばらく、バッハ作品に出会ってからのモーツァルトの作品に、耳を傾けてみようと思います。

 

イデア・ミュージック・アカデミー
東海教室主任講師 日野あゆみ