じっくりとこの楽器を弾くのは久々です。優れた楽器に共通するのかも知れませんが、

最初は何となくよそよそしいと言うか、

こちらが『久しぶりですね』と挨拶しても、

『どちら様ですか？』と言われている様な、

ぎこちない時間が過ぎて行きます。

しかし数時間後には、

『はいはい、あなたの気持ちは分かりましたから、そこはこの様に弾いたらどうですか？』と、

楽器から教えてもらえるような、何とも不思議な気持ちになります。

そして最後の方には、

『私はどの様な事にも対応しますから、自分の音楽を楽しんでください』と、

楽器が自信を持たせてくれる気がして、

何とも幸せな一時を過ごしました。

しかしこの楽器、

ホールに行くとまたまた豹変し、

より艶やかに、より芳醇な響きを奏でてくれます。

ブラームスのピアノ協奏曲第二番、奈良薬師寺でのCD録音をはじめ、

色々と想い出深いこの楽器と共に、

ベートーヴェンの後期の作品群を演奏出来る事、

とても幸せに思います。

是非、多くの方々に聴いて頂けますと幸いです。