12月13日水曜日、中西学院長によるクリスマススペシャル講義【J.S.BACH クリスマス・オラトリオ】がオンライン開催されました。
前半はヨーロッパのクリスマスの様子や絵画解説、後半はオラトリオのスコア譜を読む内容となり、クリスマスを前に大変学びの多い時間を過ごすことができました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
イエス・キリストの降誕を祝うこのオラトリオは、毎年クリスマスから新年にかけて、ヨーロッパで演奏される機会が多いそうです。
64曲全てがバッハのオリジナルではなく、他作品からの模倣も多彩に取り入れながら、当時の人々の心に響きやすい形にして作られたことは大変興味深い点です。とくに、喜びに溢れたDdur=ニ長調を作品全体の基調としながら、最初(第5曲目)と最後(第64曲目)のコラールに、歌詞の内容を替えた【マタイ受難曲における《受難コラール》】の旋律を用いたあたりからは、『降誕』と『受難』を決して切り離すことが出来ないものとして考えていた、バッハの終始一貫した強いメッセージを感じることができます。
また、場面やキャラクターの表現においても、使用楽器、拍子、調性、和声、音型、音符、休符、通奏低音の有無にいたるまで、大変巧みに、そしてバッハならではの細やかな工夫がされているところも素晴らしい魅力の一つです。なかでも第2部冒頭のシンフォニアは、全曲中唯一器楽のみで奏される曲ですが、【天使(2本のフルート)】と【羊飼い(4本のオーボエ)】の穏やかな対話から発展して、天地が融合されていく描写が大変美しく、こちらは個人的にも大好きな場面です。とくに【天使同士】、【羊飼い同士】が相談しながらお喋りしている様子は何とも愛らしく、歌詞を持たない音楽の中にいながら、個々の表情が素直に浮かび上がってくるようで、子供たちがポリフォニーを学んでいく際にもぜひ聴かせてあげたい一曲です。
劇的な構成でありながら、オペラのような演技や衣装による演出がないオラトリオは、それを聴く人々にとって自由な聴き方を可能にしている分、より深い知識や豊かな想像力が求められているようにも感じます。この作品は、まず合唱【歓呼の声を放て、喜び踊れ】からはじまり、続いて福音史家がイエスの誕生をレチタティーヴォで伝えていきますが、ユダヤ教徒として生まれ、ユダヤ教徒として死んでいったイエスが、当時どのような厳しい社会的状況の中に在ったのか、自分なりに調べたり感じたりしたことを、また近いうちに、別のページで改めて書いてみたいと思います。
イデア・ミュージック・アカデミー
東海教室主任講師
日野あゆみ